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【協調性がある?自己主張が足りない?】どうして「みんなと同じ」にしてしまうのか

こんにちは、ミライエコールのりんです。

突然ですが、こんな場面を想像してみてください。

文化祭で出すクラス企画について、クラスのみんなで話し合っています。AとBの案が出ていて、クラスのあちこちからA案を支持する話し声が聞こえています。あなたの周りにいる友人たちも「A案の方が良さそうだよね」とうなずきあっています。しかしあなたは、A案では予算がかかりすぎて一人一人の負担額が大きくなってしまうのではないかと懸念しています。

こんなとき、あなたはクラスの前でA案の反対意見を言えるでしょうか。

多くの人は、その場で意見を出すことができないかもしれません。筆者である私も、実際にそんな場面があったら意見を出さずにその場をやり過ごしてしまうと思います。

この「意見を言えない」の裏側には、もともと人前で話すのが苦手であったり、考えていることを言葉にするのが苦手であったりといった、個人の要因が考えられます。しかし、このクラスの話し合いには「意見を言えない」雰囲気があったという環境の要因も考えられるのではないでしょうか。

今回は、この「意見を言えない」の裏側にある環境の要因について、私が大学で専門的に学んでいる社会心理学の視点から考えてみたいと思います。

ここで取り上げたいのは、社会心理学でよく研究されているテーマである「同調」です。同調とは、他の人たちの態度や意見に接することで自分の態度や意見を変えることです。有名な同調の実験として、アッシュの同調実験があります。この実験では、参加者は見せられた線分と同じ長さの線分を選ぶという課題を行います。参加者1人で回答した時に間違う割合は1%未満だったのに対して、全員が誤答を選ぶサクラと一緒に回答した時は、約32%の割合で間違うという結果になりました。このように、明らかに答えがわかるような問題でも、周りに合わせて意見を変えてしまい、間違った方を選んでしまうことがあります。先ほどのクラス討議の場面は、A案が多数派の状況で、自分もその意見に合わせてしまったという同調の一例です。

では、同調はなぜ起こるのでしょうか。同調が起こる原因として考えられているのは、情報的影響規範的影響の2つです。

・情報的影響:あいまいな状況で他者の正しいと思える判断を採用すること

・規範的影響:集団の規範に合わせた行動をとること

アッシュの同調実験は、一人で回答したときはほとんど間違わないような、答えがわかりやすい課題を行っています。それにもかかわらずサクラと回答したときに誤答率が大きくなるのは、自分の意見を周りに合わせて変えた、つまり規範的影響を強く受けたということです。そして、先に例としてあげたクラス討議の場面も、同じように規範的影響による同調が起こったといえるでしょう。この規範的影響は、みんなから好かれたい、嫌われたくないという動機に基づいています。これは個人の感情というより、クラスのような集団の中で生きるために人間が発達させてきたメカニズムです。自分が集団の中の他者から受け入れられないと他者からの手助けを受けられず、生存に不利になってしまうからです。

ここまでで、人間が生きていく中で身につけた機能が働いた結果、同調がおこってしまうということがわかりました。では、同調は避けられないものなのでしょうか。集団で生きるには、周りに合わせて意見を言わない方がいいのでしょうか。実は、同調実験で紹介したアッシュが、同調を低下させる要因として多数派に反対する人の存在をあげています。つまり、誰かが多数派に反対する、もしくは多数派とは異なる意見をいうことで、同調が起こりにくくなるということです。はじめにあげたクラス討議の場面を思い返してみてください。聞こえてくる話し声や友人がA案を支持していたというだけで、「B案の方がいい」または「A案に問題がある」と思っている人は自分の他にいるかもしれません。そこで誰かがA案への反対意見を言ったとき、多数派がB案を支持するグループに変わることもあり得ます。

しかし問題なのは、その「誰か」に誰がなるかです。多数派に見える人たちの中にも、自分と同じ反対意見を持つ人がいるかもしれないけれど、最初の一言がなかったら、その人たちの意見は多数派に隠れたままになってしまいます。この記事を読んでくださっているみなさんには、ぜひその「誰か」になって、隠れた少数派の意見を引き出す存在になってほしいと思います。最初の一言を発すること、多数派に反対することの怖さはとてもよくわかります。でも、自分の一言で「意見を言えない」雰囲気をなくしたり、少数派が意見を言いやすい雰囲気を作ったりするきっかけになることができるのです。みなさんも、ほんの少し勇気を出して、自分の意見を言ってみましょう!

いかがだったでしょうか?この記事を読んで何か思うところがあったら、X(旧Twitter)でこの記事を引用して、ぜひあなたの考えを教えてください!

ライター:りん

▽参考文献

平石界. (2013). 北村英哉・大坪庸介 (著),『進化と感情から解き明かす社会心理学』, 2012 年, 有斐閣. 社会心理学研究, 29(1), 49.」

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