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【ミライエコール×FairWind】FairWindにきく!地方中高生を取り巻く学校生活の実態とは?

みなさんこんにちは、ミライエコールです。先日、FairWindさんとのコラボイベントを行いました!今回の記事では、当日の様子を紹介します。

  1. 企画実行の経緯と目的
  2. 参加者について
  3. 当日の流れとその詳細

 以上がこの記事の流れです。

  1. 企画実行の経緯と目的

 FairWindさん(以下敬称略)は、難関大学を目指す上で感じる心理的・物理的・社会的障壁を、地方高校生が乗り越えられるよう、セミナーやウェブメディアの運営、メールマガジンの配信などの活動を行っています。詳しくはFairWindのウェブサイトをご覧ください。私たちミライエコールは「生徒が学校生活に関する自分の考えや意見を言えること」などを目標に日々活動していますが(詳しくはこちら)、地方高校生は受験や進学などの意思決定の場面において、地方ならではの困難を感じているではないかと考えました。その困難について詳しく知りたいと思い、地方高校生と様々な企画を通して交流しているFairWindとのコラボイベント開催に至りました。

  1. 参加者について

 このイベントには、FairWind代表を務める増村莉子さん、FairWindメンバーの西村創さん古関陽教さんに参加していただきました。簡単なプロフィールは以下になります。

増村莉子さん

FairWind現代表、文科三類2年生、石川県出身

西村創さん

FairWindメンバー、経済学部3年生、福島県出身

古関陽教さん

FairWindメンバー、教育学部4年生、愛知県出身

また、司会はミライエコール代表の山口セナが務めました。

  1. 当日の流れとその詳細

当日の大まかな流れは以下になります

①FairWind、ミライエコールから各団体の紹介

②地方高校生が直面している問題とはどのようなものか

③地方高校生と交流する中で、その問題をどのような時に感じるか

④なぜ問題は解決されないのか

⑤問題を解決するにはどうすればいいか

①FairWind、ミライエコールから各団体紹介

 FairWindとミライエコールそれぞれから団体紹介を行いました。各団体について詳しく知りたい方は、FairWindのウェブサイトミライエコールのウェブサイトをご覧ください。

②地方高校生が直面している問題とはどのようなものか

 FairWindの活動では、主に地方の進学校の高校生との交流をしています。そこでまずは、地方高校生が直面している問題についてFairWindメンバーに聞きました。

西村さん

 「地方高校生の身近にモデルケースがないことが問題だと思います。地方では身近な先輩で難関大に進学する人が少ないです。そのため、難関大への進学や受験についての情報が得られにくく、東大や難関大の受験を自分ごととして捉えにくいのではないでしょうか。結果的に、東大や難関大の受験に心理的な障壁や距離を感じやすくなっています。」

古関さん

 「親や先生の地元志向が関係していると思います。高校生が志望校を選ぶ時には親や先生の意見を参考にすることが多く、親や先生に地元に戻ってきてほしい、地元に残ってほしいという思いがあると、生徒自身の地元志向にも繋がりやすいと考えられます。反対に、親や先生が他の地域の大学を勧めた場合には、地元以外の選択肢を考えることも多くなるのではないでしょうか。」

増村さん

 「実際の大学生・東大生と交流する機会が少ないことが問題だと思います。特に地方の高校生は、テレビ番組に出ている東大生から、大学生や東大についてのイメージを作ってしまいがちです。私も実際に高校生のときは、東大生になるということがオリンピックに出るくらいすごくて、自分には手の届かないことだと思っていました。でも実際に東大生と話してみて、東大を身近に感じることができました。身近に東大生・大学生がいないと、神格化して雲の上の存在だと思ってしまいがちです。」

③地方高校生と交流する中で、その問題をどのような時に感じるか

 次に、②ででた問題を、FairWindの活動のどんな場面で感じるか聞きました。

西村さん

 「地方高校生と話をしていると、大学のレベルの過大評価と、自分の成績や学力の過小評価をしている感じがします。高校生の学びたい分野や成績・学力を聞いたときに、東大を目指してもおかしくないくらいのレベルにあるのに、そもそも東大や難関大を視野に入れていないことがあるんです。これは②に出てきた、東大や難関大に対して心理的な障壁があるからだと思います。」

古関さん

 「実際にFairWindのウェブサイトに寄せられた質問で、このようなものがありました。

もともと数学が苦手だったが、動物が好きで農学部への進学を考えていた。そのため文理選択で理系を志望したら、数学が苦手だからという理由で先生から猛反対され、結局文系に進んだ。今は数学の苦手を克服し、いい成績を取れている。受験校を選ぶときに、やはり農学部に行きたいが文系から農学部への進学は制約があり、先生に勧められた大学を視野に入れている。

この生徒は、文理選択や進学選択で先生からの影響を大きく受けている一例だと言えます。」

司会

 「ここまでで東大や難関大への心理的な障壁があるという問題が挙げられましたが、その心理的な障壁は地域の雰囲気の影響を強く受けていると思いますか。」

古関さん

 「地方だと特に、東大を目指しているという噂が広まりやすかったり、テレビに出ている東大生のイメージで接されたりすることが多いです。それを怖く思って、東大や難関大を敬遠する地方高校生もいるのではないでしょうか。そういう意味では、地域や親からの影響を受けていると言えます。ただ、そのような状況があることを全て否定するのではなく、それを受け止めた上で、自分で東大や難関大を志望することを選びとる強さも必要だと思います。」

④データで問題をみる

 次に、データを使って②の問題の原因を考えました。今回使ったのは、東大生の出身地別割合、大学の数の地域別割合、学習塾の数の地域別割合の3つです。これについてどう考えるか、またこのデータをどう捉えられるか聞きました。

・東大生の出身地別割合

 東大生の出身地別割合を調べてみると、東京だけで全体の1/4を超えており、東京を含む関東では約6割を占めています。

西村さん

 「全国の18歳の人口の地域別割合は、東京を含む関東で全体の約3割を占めます。その一方で、東大生は約6割が関東出身です。この割合の違いを見ると、東大生の出身地が関東に偏っていることがわかります。他にも原因はあると思いますが、地方高校生が東大を目指す上でディスアドバンテージがあるというのも原因の一つではないでしょうか。」

・大学の数の地域別割合

 大学の数の地域差を調べてみると、東京だけで18%、東京を含む関東で1/4以上を占めています。

古関さん

 「ある研究によると、大学の数が少ないと、大学に入学できる学生の数も少なくなります。これを大学の収容力というのですが、地域の大学収容力が小さいと、地元以外に出る必要があります。地元を離れるということは一人暮らしをする必要があるので、大学に通うための経済的な障壁が大きくなることが考えられます。すると、大学への進学率自体が小さくなってしまいます。地方から難関大に進学することは、地方から大学に進学することを前提としているので、大学進学率が小さいことは難関大進学率にも影響を及ぼします。このように考えていくと、地方の大学の数が少ないことが難関大への進学率に繋がることがわかります。」

・学習塾の数の地域別割合

 

学習塾の数の地域差を調べてみると、東京だけで8%、東京を含む関東で1/4以上を占めています。

増村さん

 「大学や学習塾については、数だけではなく、どの層の生徒を対象にしているかなどといった質の面にも注目する必要があります。学習塾を例にすると、東京だと有名な学習塾や予備校がたくさんあったり、対面授業が多く行われていたりします。また、東大を目指す高校生もたくさんいます。一方で、地方には映像授業しか扱っていないところや難関大志望に対応していないところもあります。単純にそれが問題というわけではありませんが、選べる選択肢の幅が違うことが問題だと思います。」

⑤なぜ問題は解決されないのか

 ここまで地方高校生が抱える問題とその原因について考えました。この問題を解決するために様々な機関や団体が活動をしていますが、現状はなかなか改善されていません。この理由について3人に聞きました。

古関さん

 「インターネットなどには情報が溢れている一方で、信頼できる情報源が身近にないからだと思います。東大生に地方出身者が少ないのは、地方の高校生でそもそも東大を視野に入れる人が少なかったり、東大を目指していても途中で志望を変える人が多かったりするからだと思います。その原因として考えられることは、周りの受験生の志望校帯をみて遠慮してしまう、親や先生に反対される、インターネットの情報を見て影響を受ける、模試の成績を見て諦めるなどが考えられます。インターネットの情報は、手軽で地方の高校生にとっても集めやすいというメリットはありますが、曖昧で信憑性に欠ける情報が多くあります。一方で、ロールモデルなど身近に信頼できる情報源が少ないために、模試の成績といった一過的で運の要素が大きい基準しか得られない状況にあります。このような信頼できる情報源の少ない環境で、地方の高校生たちは志望校を考えなければいけません。」

増村さん

 「行政と小さな団体、両方の活動を行っていくことが大切だと思います。文部科学省などの行政は地方教育行政などを行っていますが、その働きかけが一人一人の高校生に届く政策をするには時間がかかりますし、どのくらいの効果が出ているかわかりにくいです。だからといって諦めるのではなく、大きな機関や行政の働きかけをさらに広げていく必要があります。それと同時に、FairWindをはじめとした学生団体などの小さな団体が、それぞれの活動を地道にやっていくことも重要だと思います。」

西村さん

 「増村さんの話を経済学の視点から補足すると、ミクロとマクロの両方の視点からみる必要があると思います。マクロはミクロの足し合わせではないですし、ミクロはマクロから測れるわけではないので、その両方を細かくみることが重要です。ここからが私の意見になりますが、都市も地方も関係なくインターネットから簡単に情報を得られる環境にあるのに、都市と地方で明らかな違いがあることをとても不思議に感じています。例えば、就職活動の地域差について考えてみると、就職活動を始める時期は関東で早い傾向にあり、明らかな地域差があります。インターネットなどから簡単に情報を集められる社会であっても、周囲の環境に大きな影響を受けているといえます。だからこそ、FairWindのような小さな団体が一人一人の高校生たちと直接交流して、進路選択に新しい視点を提示できるような活動を地道に続けていくことが必要だと思います。」

⑥問題を解決するにはどうすればいいか

 最後に、地方高校生が持っている東大・難関大への心理的な障壁を無くしていくにはどうすればいいか、問題解決への道筋を3人に聞きました。

増村さん

 「行政からの大きなアプローチと、生徒一人一人との関係を大切にした小さなアプローチのどちらも大切だと考えます。後者では、例えば母校訪問が効果的だと思います。先輩などの身近な人が難関大に行くことやその人から話を聞くことで、難関大に対してより親近感を感じることができます。テレビで見る東大生は実情からかけ離れていることが多いと感じているので、実際の東大生と交流して、知って欲しい、身近に感じて欲しいと思っています。前者の行政からのアプローチについては、大学を増やしたり塾を増やしたりなど、政策を行うことは簡単ではないと思いますが、地方にいても学力的に高いレベルの教育が受けられる環境があればいいなと思っています。

 また、大学と学生の繋がりを作る取り組みを増やすことも重要で、これには大学・学生・地方公共団体の連携が必要です。例えば、FairWindで行っている社会連携講座では、東大と連携して、オープンキャンパスにオンラインでの企画出展をしています。さらに、東大のフィールドスタディ型政策協働プログラムでは、学生と地方公共団体が協力して地方の問題解決を目指すという取り組みが行われています。このように、各機関や各団体が連携することが問題解決には重要だと思います。」

西村さん

 「ミクロとマクロの面から問題解決のアプローチを考えると、まずミクロの面では、東大生と直接交流をすることで、東大生の神格化を防ぐことが重要だと思います。そのためには、地方高校生の進路選択の幅を広げられるように、一人一人との交流ができる場を作ることが大切です。FairWindでは、学校単位での企画やウェブサイト上での個別の質問対応などで高校生との交流をしています。個人的には、これまで企画をしてこなかった、より幅広い高校生や偏差値帯に対してもアプローチをしていきたいと考えています。

 次にマクロの面からは、大学生と高校生の交流をするための経済的な支援が必要だと思います。学校側が高校生に大学生との交流の場を提供したくても、経済的な制約のためにそれが叶わないことがあります。地方高校生が大学に進学した後の支援だけではなく、大学進学を目指す段階への経済的支援も必要なのではないでしょうか。」

古関さん

 「情報で溢れた社会では、情報を発信する側と受け取る側の両方に注意しなければいけないと思います。発信する側は、ターゲットにどう情報を届けるかを考えながら、届けたい情報を溢れさせない工夫をすることが必要です。また、受け取る側の高校生は、情報をどう受け取り解釈するかが大切で、自分に合った情報を選び取る力が必要になります。」

⑦まとめ

 今回のイベントのテーマは以上になります。ここで、参加者の3人から感想をいただきました。

西村さん

 「これまでのFairWindでの活動を振り返るいい機会になりました。」

古関さん

 「今回のイベントに参加するにあたり、関連することを調べるなかで、まだアプローチできていない対象がいることや、なかなか政策までに発展していないことなど、様々なことを知ることができました。これからは問題に対して多角的なアプローチをしていくことが必要だと思いますし、当事者である地方高校生に考えてもらえるきっかけになれば幸いです。」

増村さん

 「今回のイベントでは、自分たちの問題意識を根本から見つめ直すことができました。問題に対する様々な視点からの考えを知ることができてよかったです。FairWindとして、今できること、将来やりたいことを考えるいい機会になりました。」

 今回のイベントを通して、地方高校生が抱える問題とその解決方法について、実際の高校生との交流経験をもとにお話をしていただき、様々な視点から考えることができました。増村さん、西村さん、古関さんをはじめとするFairWindさん、今回のコラボイベントの開催に多大なご協力をいただき、改めて感謝申し上げます。ありがとうございました。

 これからもミライエコールは他団体とのコラボイベントを行っていきますので、ぜひ楽しみにしていてください。この記事がいいなと思った方は、ぜひインスタグラムやX(旧Twitter)で共有してください!ご覧いただきありがとうございました。

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