みなさんこんにちは、ミライエコールです。
先日、教育支援を行うNPO法人FOSさんとのコラボイベントが行われましたので、今回は当日の内容を記事として紹介します。
目次は以下の通りです。
1.イベントの目的
2.当日の流れと内容の詳細
3.イベントを通して
1.イベントの目的
FOSさん(以下、敬称を略させていただきます)は2022年にNPO法人として認証された新しい団体です。経済格差、地域格差などの格差の解消のために包括的にアプローチをしており、現在東大最大規模の教育支援団体となっています。詳しくはFOSのホームページ
をご覧ください。
今回、ミライエコールは団体理念の一つである「生徒が学校生活に関する自分の考えや意見を言えること」に関して、学校生活の中で生徒たちにどのような困難や障害があるのかということを経済的な面から考える機会として、FOSとのコラボイベントを実施させていただきました。
イベント参加者としてミライエコールからはメンバー2名が参加し、FOSからは代表の長谷川雄飛さん、副代表の高瀬悠さんに参加していただきました。
2.当日の流れと内容の詳細
当日の流れは以下のようになっています。
①ミライエコールとFOSの団体紹介
②導入、問題提起
③現状について
④解決先の提案
⑤まとめ
それぞれの内容について、詳しく説明していきます。
①ミライエコールとFOSの団体紹介
まずは両団体の紹介をしました。ミライエコールについて知りたい方はこちら、FOSについて知りたい方はこちらをご参照下さい。
②導入、問題提起
次に、今回の問題提起とその問題の明確化を行いました。
ミライエコール
「普段どのような中高生と交流しているのでしょうか?また彼らはどのような問題を抱えているのかを教えてください。」
長谷川さん
「普段は地方に住む子ども、ひとり親世帯の子ども、困窮世帯の子どもなど様々な属性の子どもたちに対して教育支援を行っています。こうした様々な属性の人に共通して言えることとして、「お金がなくて塾に行けない」「進路の選択肢や情報が限られる」などの比較的外からも見えやすい問題だけではなく、例えば、「困窮が原因で新しい服が買えず、清潔感が保てないため学校でいじめられて不登校になり、その結果人間関係に問題が生じる」というような複雑な流れによって生じる問題や、「両親や周りの家族がとった進路以外への意識が薄く、無意識下で進路の幅が狭まっている」といった問題のように、見えにくい問題が多く隠れていることです。」
ここで強調されるべきことは「見えにくい問題」についてです。長谷川さんは実際の例として高卒の両親の元で育ち、元々進学の意志がなかった生徒が大学進学に興味を持ちだした時に経済的理由や勉強の進度が間に合わず進学を断念せざるを得なくなってしまったという話を挙げられました。これは本人の学力面だけが問題だけではなく、経済的な面や進学に対する意識など環境的な要因が関わっていると長谷川さんは話します。
また、そのような話を裏付けるデータとして以下のようなものが挙げられます。
これらのデータからも分かるように保護者の経済力と進学率には明らかな相関関係があり、年収が高い世帯とそうでない世帯では大きな差が生まれていることが読み取れます。
このデータについて長谷川さんは、環境や生まれつきの要因によって進学の選択肢が制限され、その「差が固定化されている」ことが一番の問題であると語ります。
また、「ここでは一例として大学進学を挙げているが、大学に進学することが大切なのではなく、大学に進学する、しないという選択肢が平等にあって選べるということが重要」と選択肢があることの重要性を強調しました。
③現状について
ミライエコール
「このような問題が起こり続ける理由は何なのでしょうか?」
長谷川さん
「課題は山積していますが、昔に比べて着実に良くなっていることもあります。例えば学費無償化の拡大などです。このような行政のトップダウン的な支援も非常に重要ですが、それだけでなく、我々のような支援団体が草の根の活動を行い、双方からアプローチしていくことが重要です。」
高瀬さん
「学習支援の意識改革については元々進学を意識したことがない人に対してアプローチをしても届かないことがあります。そもそもの問題を認知していなかったり、情報を発信してもそれに気づいてもらえないという状態が広がったり、続くことが格差を生み出す原因だと考えています。」
ミライエコール
「活動されていく上での困難や意識されていることはありますか?」
長谷川さん
「このような問題を考える時、自分の中にある教育像や考え方があるので問題を完全に俯瞰的に見るのは難しいです。まずは、それを自覚しながら子ども達にまずは色々な選択肢を提示して、進みたい進路や選択肢を支援することが私たちの役割だと思っています。」
高瀬さん
「例えば地域のコミュニティや親世代へのアプローチは難しいと感じます。大人は自身の経験によって、大切にしている価値観や考えが固定されているのでそこに新しい選択肢や価値観を提示するのは難しいです。だからこそ子ども達に様々な選択肢の存在を教えてあげてそれを次世代に繋げていくことで支援が広がればと思います。」
支援について、行政からの上からの支援と学生団体などの下からの支援という双方のアプローチが重要であることが分かりました。
また、支援の方法について進学という選択肢のみを与えるのではなく、まずは選択肢を知ってもらいそこから一人ひとりの望む進路を支援するという方法を取っていることからもFOSの活動への熱意と信念が伝わってきます。
④解決策の提案
ミライエコール
「ではこの問題の解決策としてどのようなことがあるのでしょうか。」
長谷川さん
「まず行政の支援というのは社会に大きな刺激を与えたり、変えたりしたい時に効果的です。一方で私たちが行う草の根の活動は1人ひとりに最適なアプローチができるという特徴があります。
また行政の支援であっても社会の多数の意見によって初めて動くものなので、少しでも問題を理解してくれる人が必要です。そのためには教育に興味がない人も含めて多くの人を巻き込んでいくことが重要ですし、地道な活動が将来的な成果や変化を生み出すのだと思います。」
高瀬さん
「経済格差、貧困などの問題は話しにくい問題、一見すると分かりにくい問題です。だからこそ、一人ひとりに寄り添った支援を行える教育団体の活動は非常に効果的だと考えています。」
教育支援というと行政や法律の改革などに目が向きがちですが、個人に寄り添った活動ができるという特徴を持つ草の根の活動も問題の解決に対して大きな効果を持つことをお二人の話を聞いて気付かされました。
そのためには長い時間がかかっても、まずは多くの人に問題を知ってもらい、問題意識を持つ人が増えること、そしてその人達が問題を変える側になっていくのではないかと長谷川さんは語ります。
⑤まとめ
今回のコラボイベントを通して明らかとなったことをまとめると
・教育の現場における経済格差には見えやすい問題だけではなく、見えにくい問題(貧困によるいじめ、無意識のうちに選択肢が制限されている)がある
・富裕層と貧困層の差が固定化され、貧困層の選択肢が少ないことが現状の格差の問題であり、まずは様々な選択肢が取れる状況にすることが重要である
・問題の解決には行政の上からの支援と草の根の下からの支援の両方のアプローチが必要
以上のようなことが挙げられます。
イベントの感想として
長谷川さんからは「今回のイベントが問題を知ってもらえるきっかけになれば嬉しい。」
高瀬さんは「問題の解決のために団体同士の横のつながりをもって社会に発信していきたい。」という感想をいただきました。
3.イベントを通して
現場で実際に活躍されているFOSの活動内容の詳細や苦労の体験を通して、教育における経済格差の現状を知れただけでなく、ミライエコールにとっても今後の活動の参考となる内容や考え方が多く、非常に貴重な機会となりました。
対談の中にもあったように、問題の解決のためにはまずは問題について認知することが必要です。この記事やミライエコール、FOSのウェブメディアを通して少しでも教育格差の現状を知るきっかけになってほしいと願っています。
最後に、今回のイベントに参加し、ご協力いただいた長谷川雄飛さん、高瀬悠さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。
ミライエコールでは今後も新しい記事やイベントを予定していますのでご期待下さい。
ご覧いただきありがとうございました!
〈参考文献〉