みなさんこんにちは、ミライエコールです。先日、以前紹介した日本若者協議会さんとのコラボイベントが無事終了したので、今回の記事では当日の内容を紹介します!
- 企画実行の経緯と目的
- 参加者について
- 当日の流れとその詳細
以上がこの記事の流れです。
1. 企画実行の経緯と目的
日本若者協議会さん(以降読みやすさの観点から敬称略とさせていただきます)は、有識者会議や国会などの政策決定の場に若年層の意見を反映させるため、主に政策提言やウェブメディアでの情報発信を行っています。詳しくは、日本若者協議会のウェブサイトをご覧ください!私たちミライエコールは「生徒が学校生活に関する自分の考えや意見を言えること」などを目標に日々活動しています(詳しくはこちら)が、これは日本若者協議会の目標である「若者の声を社会に届けること」とよく似ています。そのため、このたびコラボイベントを実施させていただきました。
日本若者協議会は学校内民主主義についての活動も行っているため、今回のイベントは学校内民主主義を土台として行いました。
学校内民主主義とは、「児童生徒、保護者、教職員が互いに話し合いながら、校則や学校行事を決めていくこと」を指します(1)。詳しくは後述しますが、日本若者協議会はこの学校内民主主義を法制度化しようと活動しています。学校内民主主義の法制度化が実現したとき、学校の意思決定の場において何がどう変わるのか。私たちミライエコールのメンバーには、学校で意見を言った体験談があります。その中には、意見を言って現状を変えようとする過程でさまざまな障壁が立ちはだかったものもあります。もし過去に学校内民主主義の法制度化が実現していたら、過去の体験談は今ごろどこがどのように変わっていただろうと思いました。そこで、今回のイベントでは、双方のメンバーの体験談を用いて学校内民主主義についてみんなで考えることにしました。実際の学生時代の体験と照らし合わせることを通して、学校内民主主義の法制度化が実現することによって学校教育、とりわけその意思決定の場がどのように変わるのかについて、理解を深めることを目的としました。当日に何が行われたかについて、詳しくは「3. 当日の流れとその詳細」をご覧ください。
2. 参加者について
このイベントの参加者は、ミライエコールメンバー数名と、日本若者協議会の代表理事を務める室橋祐貴さん、流浪人さん(当日zoom名を使用させていただきます)でした。
室橋祐貴さんは日本若者協議会の代表理事を務めています。また、文部科学省の「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」の委員も務めているほか、さまざまな新聞で記事を連載したり、コメンテーターとして活躍しています。専門・関心領域は政策決定過程やデジタルガバメント、社会保障、財政、労働政策、若者の政治参画などだそうです。今回のイベントでは、学校内民主主義についての説明やディスカッションを行っていただきました。
流浪人さんは日本若者協議会で活動している方です。小学6年生から不登校になり、中学3年生になって学校復帰を試みようとするも適応障害・強迫性障害を発症し、学校側とすれ違うことが多くなりました。それを機に、日本の教育制度が生徒の人権や主体性、民主主義を蔑ろにしているように感じたそうです。今回のイベントでは、その自らの体験談を共有していただき、ディスカッションにも参加していただきました。
3. 当日の流れと内容の詳細
当日の流れを大まかにまとめると次のようになります。
①ミライエコールと日本若者協議会からそれぞれ自己紹介
②日本若者協議会から学校内民主主義についての説明
③ミライエコール代表山口セナの体験談発表、ディスカッション、全体発表
④日本若者協議会メンバーの流浪人さんの体験談発表、ディスカッション、全体発表
⑤総括
以下が当日の内容の詳細になります。
①ミライエコールと日本若者協議会からそれぞれ自己紹介
上記の通り、両団体から自己紹介を行いました。ミライエコールについて詳しく知りたい方はこちら、日本若者協議会について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
②日本若者協議会から学校内民主主義についての説明
室橋さんから学校内民主主義についての説明をいただきました。あらためて、学校内民主主義とは「児童生徒、保護者、教職員が互いに話し合いながら、校則や学校行事を決めていくこと」を指しています。また、日本若者協議会は、この学校内民主主義を「法制度化」する必要があると考えています。
室橋さんは、大まかに分けて「⑴学校内民主主義がなぜ重要なのか」「⑵学校内民主主義に対する日本若者協議会の働きかけと政府の対応」「⑶学校内民主主義の『法制度化』がなぜ必要なのか」の3つの側面から学校内民主主義について説明してくれました。各側面で室橋さんが話されていた内容について説明します。
⑴学校内民主主義がなぜ重要なのか
学校内民主主義がなぜ重要なのか、その理由について室橋さんは「学校内民主主義がないことは若者の政治参画が進まない大きな原因だから」だといいます。現代日本では、若者の投票率が低いことやそのほかの政治参画も低水準となっていることが問題となっています。では、それらが「若者の政治への関心の低下」によって引き起こされたのかというと、室橋さんによれば、「投票率が低下しはじめた1990年代以降に、政治関心がとくに低下しているという傾向は見られない」そうです。ここから、日本の若者が政治に参加しないのは、政治に無関心だからではなく、何か他に大きな原因があるのではないかと考えられます。では、その原因とはいったい何でしょうか。室橋さんは「政治的有効性感覚が低いこと」が原因となっているのではないかといいます。「政治的有効性感覚」とは簡単に言えば「自分の意見や行動が政治や政策に影響力を持つと感じること」です。自分の投票で政治や政策を変えることができると思えば、それは政治的有効性感覚が高いことになり、自分が投票に行っても何も変わらないと思えば、それは政治的有効性感覚が低いことになります。そして、室橋さんによれば、日本の若者のうち「自分の行動で国や社会を変えられると思う」人の割合は低く、日本の若者の政治的有効性感覚は低いのです。
では、なぜ日本の若者の政治的有効性感覚は低くなってしまったのでしょうか。ここで、小さな社会ともいえる学校に目を向けてみます。日本若者協議会の調査では、「児童生徒が声を上げて学校が変わると思いますか?」という問いに対し、約70%の児童生徒が「(どちらかというと)そう思わない」と回答しました。つまり身近な社会である学校ですら、若者は変えられると思っていないのです。この原因は、義務教育を通して、子どもの権利が重視されていないことによって、児童生徒が「自分は声を上げても意味がない」と感じ行動を起こさなくなっている(学習性無力感)ことにあると考えられます。
これまでの教育は管理教育であり、ルールを作ることよりも守ることが重視されてきました。若者が自分の力で学校や社会を変えられると思えるようになるためには、「民主主義の知識をつけることに加え、民主主義を通して、民主主義を学ぶための経験を提供すること」が必要になるのです。学校や社会で若者が自分の意見や考えを言えるようになるためには、その前提として「学校内民主主義」が重要となるのです。
⑵学校内民主主義に対する日本若者協議会の働きかけと政府の対応
(1)では学校内民主主義の重要性について述べました。では、学校内民主主義に対して日本若者協議会や政府はどのような働きかけを行っているのでしょうか。
日本若者協議会は2021年に「学校内民主主義に関する提言」を政府に提出しました。また、同年には「校則見直しガイドライン」も策定しました。それに対し、文部科学省は、2021年に「校則の見直し」に関する通知を出したほか、2022年以降、改訂版の「生徒指導提要」やそのほかの教育計画においても、児童・生徒の権利や声を尊重すべきことが明文化されました。
⑶学校内民主主義の「法制度化」がなぜ必要なのか
(2)では学校内民主主義に対して、日本若者協議会や政府が対応を進め、学校内民主主義が進展しつつあることについて述べました。では、学校現場は変わったのでしょうか。室橋さんは、現状の学校現場では、学校内民主主義の進展度合いについて「校長や教員の意識の差によって」差が生じているといいます。そのため、「学校内民主主義の実現を学校の善意に頼るのではなく、法制度化をしなければならない」と日本若者協議会は考えているのです。
他にも室橋さんは、「学校内民主主義実現のためにこれから求められる施策」や「諸外国の例」などについても説明してくれました。その後、質問が2つ出たので簡潔に共有します。
ある参加者1
「先生が生徒の意見を聞くことと、それによって先生の業務が増加することのジレンマはどう解決したらいいですか。」
室橋さん
「教員の働き方改革を行う必要があります。先生の雑務を減らすことが必要です。少人数学級の実現のためには先生の確保もする必要があります。さらに、外部の専門家の支援も行う必要があります。」
ある参加者2
「法制度化により意見を言う環境を整えることで本当に生徒は意見を言えるようになるのでしょうか。制度が整えられても必ずしも生徒が意見を言うようになるとは限らないと思います。」
室橋さん
「枠組みだけできても声を上げる人がいなければ意味がないのは確かです。しかし、外国で行われているように、幼稚園や小学校など早期から意見を言うことに対する成功体験を積み重ね、実際に生活が変わる経験をすれば、声を上げることは自然と行われるようになるのではないでしょうか。」
学校内民主主義の法制度化が必要だと考える日本若者協議会は2023年、「学校内民主主義の制度化を考える検討会議」を立ち上げ、「学校内民主主義の制度化に向けた提言」を2024年1月に文部科学省と子ども家庭庁に提出しています。これから学校内民主主義の実現はますます近づくことでしょう。
③ミライエコール代表山口セナの体験談発表、ディスカッション、全体発表
室橋さんから学校内民主主義についての説明を受けたあとは、ミライエコール代表を務める山口セナから、自らが学校で意見を言った経験を体験談として発表しました。そして、「その体験談において、何が問題だったか、何が障壁となっていたか」「それら問題や障壁は、学校内民主主義の法制度化によってどのように解決できたか」の2点について、グループディスカッションを行いました。
山口の体験を簡単に振り返ります(詳しくはこちら)。高校入学直後に服装の注意を受けた山口は、意見箱の設置と服装規程の改定を公約に掲げ、一度高校1年生のときに生徒会役員になりますが、高校2年生になり生徒会長に立候補しようとすると先生に止められてしまいます。結果的には生徒会長になり、意見箱の設置と服装規定の改定も実現することになりますが、その過程では先生によって理不尽に意見を却下されるなどされ続け、かなりの時間と労力がかかりました。山口本人は自らの体験において、「教員が、生徒が意見を言うきっかけ自体を封じる」ことや「教員と生徒が話し合いをする機会がない」ことが問題であったと振り返っています。
この体験談発表後にディスカッションが行われ、そこでは数々の意見が出ました。たとえば、「何が問題だったか」について「個人の裁量で生徒の権利を制約できてしまう仕組みとなっていたこと」が挙げられました。また、「学習指導要領で定められる特別活動に位置付けられる生徒会活動は、教員に介入されることがあり、本当の意味で学校生活を動かす集団にはなれない」という意見も出されました。生徒会活動はあくまで学習指導要領の一部であるため、実際に学校生活の問題を解決する役割を果たしていくことが難しい可能性があるということです。それに対する「学校内民主主義に基づく解決策」として、「第三者が介入し、生徒の権利を学校側が不当に制約できないようにすること」が挙げられました。
④日本若者協議会メンバーの流浪人さんの体験談発表、ディスカッション、全体発表
山口から体験談を発表しディスカッションを終えたあとは、日本若者協議会で活動する流浪人さんから自らの体験談を話していただきました。そして山口のときと同じく、「その体験談において、何が問題だったか、何が障壁となっていたか」「それら問題や障壁は、学校内民主主義の法制度化によってどのように解決できたか」の2点について、グループディスカッションを行いました。
流浪人さんの体験を簡単に振り返ります。流浪人さんは親子関係と友人関係で問題を抱えるも支援がなく、小学校6年生のときに不登校生活となります。中学生になってから、不登校の子どもに対して学校復帰を支援する市内の適応指導教室に通いはじめるも、その存在を学校は教えてくれなかったといいます。また、同じく適応指導教室に通う同世代の人々を見て、日本の教育が未成年者の人としての権利を奪っているように感じたといいます。中学3年生になると相談室登校をはじめますが、学校でのコミュニケーションや関係づくりに難しさを感じます。そして適応障害や強迫性障害を患い、リハビリも難しく、通学もできず、落ち込む日々が続くことになりました。その数ヶ月間で、流浪人さんは「現状の学校が互いの主観や感情、主体性、コミュニケーション、民主主義的合意形成などを潰すような環境となり、未来の社会の主権者となる未成年者から民主主義を奪うことで、民主主義を学べなかった子どもが大人になった際に子どもに同じことをするという悪循環が生じている」ことが問題であると考えました。流浪人さんは、この現状を訴えるために、卒業式の壇上で証書を受け取る際にマイクを借り、当事者としての体験と感情を話し、「公立中学校に限界を感じた」とコメントしました。その翌年には、通常の小中学校に設置され障害を持つ子どもを対象とする特別支援クラスが新設されましたが、なぜ今まで設置されなかったのか疑問に感じたといいます。
この体験談後にディスカッションが行われ、ここでも数々の意見が出ました。たとえば「何が問題だったか」について学校に「本人の意思決定という視点が抜けていたこと」が挙げられました。それに対する解決策として「自己決定権を個人に委ねるために、あらかじめ選択肢を用意すること」が挙げられました。具体例としては、時間割を選べる、夜間中学校をサードプレイスとするなどが挙げられました。夜間中学も含めて、学校以外の学ぶ場所があれば、不登校の生徒の学ぶ権利が確保されるのではないか、という意見も出ました。
⑤総括
以上で企画の大枠である「学校内民主主義についての説明」と「体験談発表・ディスカッション」が終わりました。企画終了間際、ミライエコール代表の山口セナと日本若者協議会代表理事の室橋祐貴さんから感想をいただきました。また、山口のほかに、参加者の1人からも感想をもらいました。
山口セナ
「体験談ベースで学校内民主主義について考えることができてよかったです。自分の体験を再び振り返ることができたのも嬉しかったです。室橋さんの話では政治的有効性感覚や学習性無力感が取り上げられていました。自分の学校生活を振り返るとたしかに、高校生になるころにはみんな効率の良い学校生活の切り抜け方を学び、何かをやってみよう・変えてみようという雰囲気がほぼなかったと感じます。この感覚が言語化されてとても納得がいきました。」
室橋さん
「学校内民主主義はここ数年ようやく議論がされはじめたばかりで浸透していないため、今回のように議論を続ける必要があります。民主主義と人権保障は本来セットで考えるべきです。人権保障のためにそれぞれの意見を出しやすくする必要があるのです。民主主義とセットで人権についても考えることで、あらゆる人が生きやすい社会になるのではないでしょうか。」
ある参加者3
「海外では幼稚園児にも自分たちで意思決定をする場があるとお聞きして、そのような経験を幼いうちから積むことの重要性を知ることができました。」
学校内民主主義の法制度化という観点から「生徒が学校で意見を言えるようになるためにはどうしたらいいのか」について考えることはミライエコールにとっては初めてであり、思考の領域がさらに広がりました。また、今回のイベントは初めての他団体とのコラボということもあり、慣れずに手探りなことも多かったのですが、日本若者協議会さんからのお力添えによりなんとか遂行することができました。室橋祐貴さん、流浪人さんをはじめとする日本若者協議会さんにあらためて感謝申し上げます。ありがとうございました。
また、今年の3月には、室橋さんをはじめとした日本若者協議会が、各政党幹部の参加する「民主主義ユースフェスティバル2024」を主催するそうです。この記事で民主主義に興味が出てきた方はぜひご覧ください。
これからもミライエコールは他団体とのコラボイベントを行っていきますので、読者のみなさまはぜひ記事を楽しみにしていてください。また、この記事がいいなと思った方はぜひ、インスタグラムやX(旧Twitter)で共有してください!ご覧いただきありがとうございました。
参考文献
(1)公明新聞, 『子どもの声が尊重される「学校内民主主義」進めよう 生徒指導の手引、12年ぶりに新しく』,2022年