以前、ミライエコールが調査事業を実施していることを記事でお知らせしました。
(【東大教授後援】ミライエコール、学校生活に関する調査を始めます! – ミライエコール (mirai-ecole.com))
この後、私たちは実際に初回の調査事業を実施しました。この記事では、その結果について見ていきたいと思います。
目的と仮説
目的
実際の高校生の学校生活での意識や行動を明らかにするため。また、その改善を試みる活動に役立てるため。
背景
日本の学校において、ブラック校則等の問題は近年話題となっているが、生徒・教員の意識や学校の環境に根本的な問題があるのではないかと考えた。
仮説
①
「教師や校長等に対して生徒が自分の意見や思いを言いやすい雰囲気があると思うか」と以下の項目との正の相関関係があるのではないか。
a)「不満があることがらを是正しようとする行動について、教師が行動をやめるよう言ったり、考えを改めるように強制したりすることはあると思うか」
b)「学校側が生徒の意見について教員間で適切な議論をしていると思うか」
c)「学校側と生徒で生徒の意見について十分に議論をする場があると思うか」
②
「学校で感じる不満への解決策を考えたときの行動」と以下の項目との正の相関関係があるのではないか。
a)「不満があることがらを是正しようとする行動について、教師が行動をやめるよう言ったり、考えを改めるように強制したりすることはあると思うか」
b)「学校側が生徒の意見について教員間で適切な議論をしていると思うか」
c)「学校側と生徒で生徒の意見について十分に議論をする場があると思うか」
③
「学校で感じる不満への解決策を考えたときの行動」「教師や校長等に対して生徒が自分の意見や思いを言いやすい雰囲気があると思うか」のそれぞれと、性別・学年・生徒会役員経験の有無などの属性との関連があるのではないか。
データ
対象者
全日本教職員組合を通してアンケート調査にご協力いただいた学校、ミライエコールの調査協力のお願いに応じて協力してくださった学校の生徒の皆様
方法
Google Formを用いたアンケート調査
調査時期
2024年3月~4月
各県での有効回答数
神奈川 312
富山 25
長野 52
滋賀 4
岡山 4
香川101
沖縄 1
無回答 14
その他
・以下、問3「学校に対してどのような不満を抱いているか」に対して「その他」を選択し、「不満無し」と回答した人及び無回答の人を除き、学校に対して不満がある人のみを対象として分析を行った
・問17「教師や校長等に対して生徒が自分の意見や思いを言いやすい雰囲気があると思うか」に対する回答について、「そう思わない」「あまりそう思わない」を「言いやすい雰囲気がない」としてまとめ、「そう思う」「とてもそう思う」を「言いやすい雰囲気がある」としてまとめた。
・問7「学校で感じる不満への解決策を考えたときの行動」に対する回答について、「何もしない」「友達と言い合って終わる」を「行動なし」としてまとめ、「すぐ改善できそうなことがらだったら、変化を起こすための行動をする」「改善に時間がかかりそうなことがらであっても、変化を起こすための行動をする」を「行動あり」としてまとめた。
このデータに基づいて、上記の仮説が実証できるか分析を行いました。
結果
各質問の回答分布
質問項目ごとに、回答分布を見ていきます。
グラフの縦軸はパーセンテージを表します。
①不満があることがらを是正しようとする行動について、教師が行動をやめるよう言ったり、考えを改めるように強制したりすることはあると思うか?
→「あると思う」が半数弱を占めている。
②学校側が生徒の意見について教員間で適切な議論をしていると思うか?
→「いいえ・どちらかというといいえ」が半数弱を占めている。
③学校側と生徒で生徒の意見について十分に議論をする場があると思うか?
→「いいえ・どちらかというといいえ」が半数強を占めている。
④教師や校長等に対して生徒が自分の意見や思いを言いやすい雰囲気があると思うか?
→「ない」が半数強を占めている。
関連を分析
次は、二つの質問項目に対する答えの関係を見ていきます。
①
a)
→関連が見られた。
b)
→関連が見られた。
c)
→関連が見られた。
②
a)
→特に関連は見られなかった。
b)
→特に関連は見られなかった。
c)
→特に関連は見られなかった。
③
a)
→関連が見られた。
b)
→関連が見られた。
まとめ
結論
各質問の回答分布①〜④より、約半数の生徒は教員に対して、自分の行動を抑圧されていると感じたり、不満を言っても議論をしてくれない、学校で意見を言いやすい雰囲気があると思っていない。このことから、学校において意見の言いやすさがない可能性がある。
また、「関連を分析」の①a)とb)で両者に関連が見られるが、ここからどちらの変数が原因にあたるのかは読み取れない。
しかし、生徒が意見を言いやすいと感じることが、教員の行動に影響を与えるとは考えにくいため、教員が生徒の意見を受け入れる姿勢があるかが、学校で生徒が意見を言いやすいと感じる雰囲気に影響を与えると推測できる。
関連を分析」の①c)でも両者に関連が見られる。ただし、ここからどちらの変数が原因にあたるのかは読み取れない。
「関連を分析」の②では、特に関連が見られず、仮説は成り立たなかった。
「関連を分析」の③a)でも、関連は見られたが、ここからどちらの変数が原因にあたるのかは読み取れない。仮に、生徒会が役割を果たしていることが生徒の行動の有無に影響を与えているとすると、生徒会が役割を果たしてくれることに安心感を抱いた生徒が、行動を起こしやすくなると考えられる。また、学校全体として、生徒の自治が活発な文化であり、因果関係ではない可能性もある。
③b)でも同様だ。仮に、「生徒会役員の経験の有無」が「行動の有無」に影響を与えるとすると、生徒会役員の経験により、行動のハードルが下がっていると推測できる。また仮に、「行動の有無」が「生徒会役員の経験の有無」に影響を与えるとすると、元々行動力のある人が、生徒会役員になりやすいと推測できる。
課題
・調査実施人数が少なかったため、十分に普遍性のあるデータが取れなかったこと。
・学校によって回答数に偏りがあったこと。
・質問項目で想定される事態が、回答者が想像しにくいものがあったかもしれないこと。例えば、「学校と生徒の間に議論の場があるか」で、「議論の場」とは具体的にどのようなものなのか?など。
・関連を分析することは出来たが、因果関係までは分からなかった。
今後はこれらの課題を踏まえて、第2回調査の実施も考えています。ミライエコールの今後の調査事業についても、ぜひご注目ください!